ABSシステム (量産 vs モータースポーツ)
こんにちは
今回はレース車両に搭載されるABSと量産車両のABSの違いについて簡単に説明しようと思います。
(1) 量産車両のABSについて
ご存知の方も多いかもしれませんがABSとはAntilock Brake Systemの略で、ドライバがブレーキを踏んだ際にタイヤがロックを防ぐシステムです。
量産車では法令で搭載が義務付けられており、近年はレース業界でもGT3車両を中心に、多くのツーリングカーに搭載されています。
要点は下記しますので、詳細はWikiをご確認ください。
ABSの役割はタイヤロックを避けるように制御することで、その恩恵は大きく分けて2つあります。
① 制動距離を短くする
② 車両の挙動を安定させ、ドライバが回避操作可能にさせる
時々、ABSの役割として①のみを挙げる人がいますが違います。
もちろん①は大切で制動距離を短くすれば、万一の場合の衝突回避の可能性は高くなります。但し状況によってはABSを採用しても制動距離は長くなることもあり注意が必要で、重要なのは②になります。
タイヤロック時はステアリングを操作しても車両は旋回出来ません、仮に前方に他車両や歩行者が居ても直線的に滑走してしまい回避不能です。
つまりABSとは
”ステアリング操作可能な状態を維持しながら、可能な範囲で制動距離を短くすること”
を目的に作られています。
(2) レース車両のASBについて
実は上述の①、②は実は二律背反の関係になります (下図参照)。
量産車両のASB制御は①”制動距離”のパフォーマンスは落として②”車両の安定性”を重視しています。
これはアマチュアドライバの場合、運転技量にかなりの差があるためで万人向けの量産車両開発では避けられません。例えば免許取り立てのドライバはブレーキを踏みタイヤがロックしそうな状況でステアリングを急に切ってしまうかもしれません。
そうすると車両は旋回出来ず、滑走していきます・・・
量産開発では”誰でも安全に運転できる車両”が大事で②”車両の安定性”が最優先です。
一方でレース車両では①”制動距離”のパフォーマンスを最大化します。
なぜならドライバはプロ (一部アマジェントルマン)ドライバーのため、多少車両が不安定になってもドライバの技量でコントロールしてもらうことが可能なためです。
つまり車両状態はドライバが持つセンサで検知してもらいます。
引用先:Bosch ABS M5 Manual
またレース車両ではタイヤ、キャリパサイズやパットも専用品です。さらにサーキットごとに空力セッティング、重量バランスの違いが影響してきますので、車両およびサーキットコンディションごとに最適化が必要になります。故に汎用性を高くするためにいくつか制御マップを持っておき、スイッチで切り替え可能なシステムもあります。
読んで頂いてありがとうございました。